あなたの落とした願いごと
その全てを一斉に聞きたくて口を開いたら、最初の疑問部分しか口を継いで出てこなかった。


「どうして?」


私の質問をオウム返しにした彼は、可笑しそうに笑う。


「俺、今さっき学校来たんだけど、此処の前を通った時に福田の声が聞こえてきてさ。耳澄ましてたら俺の話してるみたいだったし、ミナミの声も聞こえてきたから」


「待って、どこから聞いてたの?」


脈拍が速くなるのを感じながら努めて冷静に尋ねると、


「俺とお前じゃ釣り合わない、って福田が言ってた辺りから」


「それ、結構初めの方じゃん…」


私が目を伏せると、滝口君は、いたずらっ子のように楽しげに息を零した。


「お前、俺の事褒めすぎじゃね」


そのままの口調で墓穴を掘られ、頬がかあっと熱くなる。


「止めてよ、」


それってほぼ確実に、彼が私が想いを寄せている事に気づいたと言う事ではないか。


恥ずかしい上に臆病な私は、何も出来ずに再び縮こまった。


「いやー、結構見直したわ」


からかい口調の滝口君は、その肌色の丸を私の顔に向けてくる。


「あいつは、俺とお前じゃ釣り合わないって言ってたけど」


そして、彼の優しい声が鼓膜を震わせる。


「俺は、そんな事ないと思う」


「…?」


この言葉は、本当にからかいの一種なのか。
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