あなたの落とした願いごと
滝口君の口から流れる言葉を聞いた瞬間に涙が引っ込み、私は目を最大限まで見開いた。




「ミナミ。…俺は、お前の事が、好きだ」




たっぷりと間を開けて伝えられたその台詞は微かに震えていて、冗談ではない事くらいすぐに分かる。


「ひゃあ、」


あんぐりと開いた口からは素っ頓狂な声が漏れ、胸の鼓動が最大限まで高まった。


滝口君が、私を、


「好き…、」


思考回路が完全に停止した私は、一番重要な部分の言葉をオウム返しに繰り返す。


…これって、両思いという認識で良いんだよね?


「まあそういう反応になるよな、お前は俺の顔も見れてないんだから」


今朝、遅刻覚悟で金髪に染め直しただけましだったかも、なんて呟きながら、彼は私の腕を掴んだ。


「な、」


もう、上手く舌が回らない。


「これでどうよ」


私が奇声に近い声をあげている事を完全に無視した滝口君は、掴んだままの私の腕を真っ直ぐに自分の胸へと押し当てる。


その瞬間に感じたのは、汗ばんだシャツ越しに伝わる体温と、

私よりも激しく鳴り続ける心音。



「ほら、分かったろ」


何処か勝ち誇ったようにそう言った彼は、もう何も恐れるものがないと言いたげで。


私も滝口君と同じ気持ちだから、もちろん敵うはずもない。



「あの、私も、滝口君の事、…好きです…」


新たな涙を流しながら、私は初めて、掠れた声で想いを伝えた。
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