あなたの落とした願いごと
この2人はニコイチ同然の関係で、本当に仲が良い。


そんな彼らの人気ぶりと言ったら、部活中に耳を澄ますと、学年問わず女子からの大歓声がひっきりなしに聞こえてくるくらい。


そして、空良君は何においても彼女であるエナを最優先で考えていて、2人はクラスから“美男美女カップル”に認定されている。


そんな彼は他の女子への態度も素晴らしいからいつだって周りに人が群がっている、つまりエナがされる待遇の男版。


対する滝口君はもちろん人気はあるものの、どちらかと言えば孤高の人の様な独特の雰囲気を漂わせているから、女子も歓声を上げたり噂にするだけで迂闊に近付いたりはしない。


それに加えて彼は超絶塩対応で何に対しても無関心だから、話し掛けた所で会話が成立せずに追い返されるのがオチ。


だから、何だかんだ言って彼から皮肉の言葉を頂戴している私はレアな存在なのかもしれないな、なんて。



「ねー神葉、お前も俺と同じ班になりたいよね?」


ふと斜め前を見ると、空良君が明るく滝口君に話し掛けていて。


そして、名前を呼ばれた張本人はというと、


「ねえ王子、」


「しつこいな」


先程から懲りずに自分に話し掛けてきていた女子を一言で黙らせ、あーそうだな、と、いつもの様に棒読みの返事を返していた。


(うわあ、…)


他人に何を言われようと塩まみれの対応を崩さないその姿に、逆に凄い、と、思わず口を開けてしまう。
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