あなたの落とした願いごと
その内容は、もちろん5月初旬に行われる社会科見学について。


「えー、班決めについてですが」


開口一番、先生が触れたのは生徒全員の話題の種となっていた例の件だった。


(お願い、エナと同じにさせて!)


大抵、班決めや席替えはくじで決めるものだから、最早自分の運に全てを賭けるしかない。


腕組みをしながら椅子に深く腰かけている人気者とは真逆で、私は両手を組んで祈りのポーズをとった。



そしてそこからきっかり3秒後、溜めに溜めた先生が発した言葉は、


「…非常に残念ですが、4組が班決めの最中に揉めて乱闘になりかかった事も考慮し、班決めは今の席順で組むことになりました。自分の前後左右4人と班を作って下さい」


という、喜ばしいけれどある意味衝撃的な意味合いを含む台詞だった。


「…え?」


滝口神社でお祈りをする時の様に目を瞑っていた私は、弾かれたように目を開けて先生を凝視する。


まあ、もちろん先生の顔なんて良く分からないのだけれど、


「席順って事は、…エナと同じ班?」


先生の言葉を噛み砕いた私は、確かめるように呟いた。


「うちら同じ班だよ!うわー、社会科見学めっちゃ楽しみ!」


ガヤガヤとどよめく教室で、私の声が聞こえたらしいエナがこちらを振り返って興奮気味に手を叩く。
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