あなたの落とした願いごと
多分、いや絶対、彼女は私に向かって満面の笑みを浮かべているんだろうな。


もう、エナが居れば怖いものなんて何もない。


自分の全てを知ってくれている友達が隣に居るだけで、私の心は安心感で満たされるんだ。


やったね!、と、ハイタッチをして喜んでいる私達の隣では、


「うおおぉい神葉!俺の願いが神に届いたんだけど!最高かよ!」


私達と全く同じ構図で、空良君が大声を上げながら滝口君の机に手を乗せていて。


けれど、そこはさすが滝口君と言うべきか。


「またうるさい奴らと一緒に居なきゃいけねぇのかよ…てか4組治安悪すぎだろ」


親友の方へと顔を上げた彼は、班決めの結果などまるで興味がなさそうにため息をついた。


そんじょそこらの取り巻き女子達なら、彼の態度が怖くて目に涙を浮かべるだろうに、


「ほんっと天邪鬼だなお前は!俺達と一緒で嬉しいくせにー!揉めてくれた4組に感謝しないと!」


学年一の人気者の扱いに慣れている空良君は、笑いながらその肩を小突く。


「ちょっとちょっと、“うるさい奴ら”って誰の事言ってるの?どうせ空良の事なんだから単数形に訂正してくれない?」


そこで、滝口君の言葉に反応したエナが2人の会話に参戦した。


「エナ、」


空良君よりも大きな声でプンスカと怒っている彼女は可愛らしくて、でも傍から見ると恥ずかしくて。
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