あなたの落とした願いごと
ただ“沙羅はこの人達に比べたらうるさくないよ”という趣旨の文を言われただけなのに、それを言ったのが学年一の有名人だからか、やけに嬉しくて。


それはつまり、私と同じ班で嬉しかった、という事なのかな。


それは流石に考え過ぎかな。



「あ、ありがとう」


どぎまぎしながらお礼を言うと、滝口君の整っているのであろう顔がこちらを向いた。


案の定何にも見えなくて、彼の鼻筋がやけに高い事しか分からないけれど。


「おう」


滝口君のぶっきらぼうな言葉は、今まで聞いてきた彼の返事の中で1番嫌な雰囲気を含んでいなかった。



と、その時。


「先生、私余っちゃいましたー。他の人と同じ班になってもいいですかー?」


左の方から、作ったような高い声が聞こえてきた。


この声は1度聞いただけで分かる、福田さんのものだ。


(ん?)


斜め前を見ると、案の定福田さんが先生に向かって挙手をしていて。


そして、その顔は…


「うわ、亜美ちゃんこっち向いてるよ。あれは、絶対私達の班に入って神葉君狙うのが魂胆だな」


すかさず、滝口君に突っかかるのを止めたエナが私の耳元で実況中継をしてくれる。


「ひえーっ、亜美ちゃんニッコニコなのに神葉君ガン無視!…こりゃあ、亜美ちゃんが此処に入ったら修羅場だよ」
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