あなたの落とした願いごと
写真に写る全員の顔がのっぺらぼうになるという、まるで心霊写真の如きそれを自分から見たいとは思わなかったし、自分が妖怪の一員になるのも嫌だった。



…でもまあ、自分が見なくても他の班員の思い出になればいいな、なんて、そう思ったんだ。



「え、侍に会えるの?絶対楽しいじゃん、行こ行こ!」


いつでもどんな時でもテンションの高い空良君が、真っ先に私の案に同意してくれる。


流石空良君、そういう対応をするから女子があなたの周りを寄って集って離れないんだよ。



「どう、かな…?」


そして私は、全ての権限を握っている滝口君の顔をそっと見上げた。


もちろん皆が行きたい所があればそっちを優先するよ、と、彼の機嫌を損ねないように予防線を張り巡らせたのに。


「ふーん。…楽しそうだし、お前が言うなら良いんじゃね」


幻聴だろうか、彼が発した言葉はまたもや肯定の意味合いを含んでいた。


「えっ、本当…?」


天邪鬼なはずの彼が今日はやけに素直で、嬉しくなって確認してしまう。


「いや、普通に考えて脳内空っぽのこいつらに比べればお前の方がまともな案出してんじゃん」


彼が私の案を取り入れてくれた事は確かに嬉しかったけれど、

でもやっぱり、滝口君を構成しているのは塩対応と毒舌で間違いなさそうだ。


「あー、はは、ありがとう」
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