あなたの落とした願いごと
私を褒めてくれているのは嬉しいけれど、“お前”とか“脳内空っぽのこいつら”とか、少々気に障る台詞があったから、苦笑いでお礼を伝えた。


滝口君は私の返答に満足したのか、


｢あ、あとお前、｣


と、新たな話題を持ちかけてきて。


｢ん？｣


だから返事をしたつもりだったのに、


｢何？｣


何故かエナと声が重なってしまった。



(…あ、)


その瞬間、ドクン、と、心臓が一際大きな鼓動を生み出す。


そして、この間違いの原因を探る為に私の脳みそがフル回転で解析を始めたのが分かった。


間違えた、これは完全に私のミスだ。


多分滝口君は、顔をこちらに向けたまま目だけをエナの方に向けて話し掛けた。


でも、彼の目線すら読み取れなかった私は、自分が話し掛けられていると勘違いをしてしまったんだ。


「ごめん、てっきり私に話しかけてるのかなって、」


もしこれが不自然な間違い方だったらどうしよう、全ての景色が見えているエナに非があるわけが無いんだから。


他の人からしたら“些細な事”のはずが、私の顔からは早くも血の気が引いていく。


｢あっ、ごめーん。神葉君、沙羅の事呼んだの？｣


私と滝口君を交互に見比べるように首を振ったエナが、頬に手を添えたのが見えた。
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