あなたの落とした願いごと
「で、お前は、」
彼が机に肘をついたせいで、シャーペンがその上をころころと転がる。
「お前は、何て呼ばれたいの?」
彼の声が、ふわりと舞い上がった。
(えっ、…?)
いきなり尋ねられたせいで、私の頭の中は真っ白。
今の流れなら普通、自分で私の呼び名を決めるところではないのだろうか。
それにもし、じゃあ沙羅で、なんて答えた暁にはきっと滝口君に鼻で笑われるだろうし、他の女子…特に福田さんからの仕打ちが目に浮かぶ。
けれど、私はそこまでして自分の身を危険に晒す行動はしない。
最初こそ驚いて目を見開いてしまったものの、普通に、名字とか…?、と、若干語尾を上げて答えると。
「ナンノ、って?」
私の名字をわざとらしく抑揚のない声で発音した彼は、輝く金髪をかき上げた。
「南野って“何の”みたいで無理。ミナミで良い?」
「ミナミ!?」
人の名字の意味を変えて遊ぶ男子はこれまでも見てきたけれど、私を“ミナミ”と呼んだ男子は初めて。
南野の南で、“ミナミ”。
初めて付けられたそのあだ名は、私の想像の斜め上をいくもので。
名字をアレンジして呼ばれるなんて初めてで何処かむず痒くて、でも、素直に嬉しい。
多分、福田さんが私の立場なら喜びのあまり泣き出すだろうな。
彼が机に肘をついたせいで、シャーペンがその上をころころと転がる。
「お前は、何て呼ばれたいの?」
彼の声が、ふわりと舞い上がった。
(えっ、…?)
いきなり尋ねられたせいで、私の頭の中は真っ白。
今の流れなら普通、自分で私の呼び名を決めるところではないのだろうか。
それにもし、じゃあ沙羅で、なんて答えた暁にはきっと滝口君に鼻で笑われるだろうし、他の女子…特に福田さんからの仕打ちが目に浮かぶ。
けれど、私はそこまでして自分の身を危険に晒す行動はしない。
最初こそ驚いて目を見開いてしまったものの、普通に、名字とか…?、と、若干語尾を上げて答えると。
「ナンノ、って?」
私の名字をわざとらしく抑揚のない声で発音した彼は、輝く金髪をかき上げた。
「南野って“何の”みたいで無理。ミナミで良い?」
「ミナミ!?」
人の名字の意味を変えて遊ぶ男子はこれまでも見てきたけれど、私を“ミナミ”と呼んだ男子は初めて。
南野の南で、“ミナミ”。
初めて付けられたそのあだ名は、私の想像の斜め上をいくもので。
名字をアレンジして呼ばれるなんて初めてで何処かむず痒くて、でも、素直に嬉しい。
多分、福田さんが私の立場なら喜びのあまり泣き出すだろうな。