あなたの落とした願いごと
「今日から学校かな?頑張ってね」


「はい、ありがとうございます」


こうして、この神社の宮司さんと会話をするのも何度目だろう。


朝っぱらから此処を訪れる高校生なんてそうそういないから、完全に顔を覚えられてしまった。


私は、どんなに頑張ってもその人の顔が分からないというのに。



朱色に染まった鳥居をくぐり抜け、歩き続ける事数十分。


次は『白河高校』と書かれた校門をくぐり、昇降口の前に置かれた掲示板を前にして、ローファーを履いた足を止める。


『今日の星座占いの1位は牡羊座のあなた!おめでとうございます、今日も一日楽しんで下さいね!』


今朝、ニュースキャスターがそんな事を明るく口にしていたから、もしかしたら良い事があるかもしれないと思っていたけれど。


「南野、南野…あった。あ、エナの名前も!」


さすが星座占い、私の期待を裏切らないなんて。


1から8組までずらりと並んだ表の中、2年5組と書かれた表に自分の名前と親友の名前を見つけた私ー南野 沙羅(なんの さら)ーは、掲示板を見上げながらにっこりと口角を引き上げた。



何を隠そう、今日は私の通う白河高校の1学期始業式。


つまり、毎年恒例クラス替えなるものが開催される日なわけで。


正直、またクラスメイトの特徴と名前を一致させるのは大変だし体力も削られる。
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