あなたの落とした願いごと
でも、今日は神社で参拝も出来たしエナと同じクラスだし、かなり良いスタートを切れているのではないだろうか。


40人近くのクラスメイトが在籍する新しい教室で、私が名前を当てられるのは片手で数える程しかいないと思う。


それでも、努力すれば人の特徴は覚えられるから大丈夫。


人の事を覚えるのなんて暗記科目と一緒、コツを掴めばなんてことない。


大丈夫、私なら出来る!、と自分にエールを送った私は、そのままくるりと踵を返して下駄箱へと向かって行った。



と。

自分の下駄箱の前で上履きに履き替えようとしていた私の耳に、キャハハと笑う女子達の声が聞こえてきた。


「ねえリナー、放課後ワッフル食べに行かない?」


「あー、めちゃくちゃ美形の店員さんが居る所だよね?」


「そう!私、あの人に会うだけで心が浄化されるんだよね」


「良いよ、行こ行こ!」


耳をダンボの様に大きくして彼女達の会話を聞いていた私は、上履きを履き替えながら心の中で呟く。


(今のはナナミちゃんとリナちゃん。同学年でダンス部に入ってる)


同じ部活の彼女達の事なら、最早姿を見なくても顔以外の情報は頭に入っている。



ナナミちゃんは黒髪ショートカット、制服のスカートは3折り。

いつも貝殻の形のピアスを付けていて、先程の会話にも出て来たカフェが大好き。

そこで働く店員さんが好みのタイプで、SNSではその人の事ばかり呟いている乙女な少女。
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