あなたの落とした願いごと
馬鹿が此処にも、と、大げさに頭を抱える滝口君は、やっぱりどこか楽しそうに見える。


「だって、あんまり神社とか行く機会ないし」


「そうだろうけど、常識ってもんがあるだろ」


2人の言い分も理解出来るのか、彼の言葉は何処か煮え切らない。


「俺頭悪いからよく分かんないんですー、説明して下さいー」


「自分で調べても解決しなかったのを聞かないと、学習にならねえだろ」


「ケチ!神葉のケチ!もう話さないよ!」


「勝手にしろよ」


阿形の獅子像の目の前で、阿吽の呼吸の如くそんな会話を繰り広げている彼らがやけに面白くて、

私もエナも、同時に笑い声をあげる。


ずっと、こういう楽しくて幸せな時間が続けばいいのに、と、心から願った。


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