あなたの落とした願いごと
「終わったあああ…」
それから、どれくらいの時間が経っただろうか。
脳みそをフル回転させて問題とにらみ合っていた私は、遂に滝口君の助けを一度も借りることなく全ての問題を解き終わり、その開放感から大きく伸びをした。
丸付けなんて後で良い、今は自分の頑張りを認めて褒めて、心ゆくまで休憩しよう。
「出来たよ、滝口く、ん…」
一緒に休憩に入ろう、と誘いたくて横を向いたら、
デジャブだろうか、今度は肘に頭を乗せたままでこちらを向く滝口君と目が合った。
いや、目が合ったというより、顔が合った、という表現が正しいのか。
「滝口君、終わったよ。教えてくれてありがとう」
未だに眠り続けるカップルを起こさないように小声で話しかけたのに、当の本人は微動だにしない。
(え…起きてるの?)
滝口君の肌色一色に塗りたくられたその顔からは、何の表情も浮かんでこない。
音を立てないようにして体勢を変えた私は、様々な角度から彼の顔を覗き込んだ。
金色に光り輝く前髪は彼の目にかかっていないというのに、彼が瞠目しているのかはいまいち区別出来なくて。
…でも、私がこんなに見つめていても尚何も言ってこないという事は、やっぱり寝ているのだと思う。
人が起きているか寝ているかも判断出来ないなんて、凄くもどかしいよ。