あなたの落とした願いごと
4人で勉強会をした日、自分の気持ちに気付いた私は恥ずかしながら泣いてしまった。


正直、今でも何が正しいのかなんて分からない。


でも、滝口君を見る度、話す度に高鳴る胸と苦しくなるこの気持ちに嘘はつけなかった。


誰にも見られる事無く泣き止んだ私は、目が赤くなっているかを知る手段がないから、結局目薬をさして誤魔化して。


私が腹を括った事に誰も気付かないまま、勉強会はお開きになった。



(この神社に通うのも、もう1年以上か...)


参拝を終えた私は、木で出来た手すりをそっと撫でながら考える。


私が此処を初めて訪れたのは小学生の頃だけれど、こうして通い始めたのは高校1年生になって間もなくの事だった。


休日と試験期間以外はほぼ毎日通い詰めたのだから、もうそろそろ、

神様の耳に願いが届いてもおかしくない。



(でも、17歳にもなって神頼みなんて馬鹿げてるかな?)


良く考えたら、本当に現実味のない話だ。


治療法は無いと言われているこの病気の事を家族全員は受け入れているのに、当人がまだ希望を捨てきれていないなんて。


「けど、...見たいんだもん」


境内を後にした私は、砂利を踏みながらぼそりと口にする。



滝口君の笑顔さえ見れれば、それだけで十分なの。


ずっと大変な思いをして来たけれど、私は幸せだって、胸を張って言えるはずだから。
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