あなたの落とした願いごと
そんな事を考えながら、脇にある小さな鳥居を抜けた瞬間。



「あれ、ミナミじゃん」


いきなり、横から見知った声が聞こえた。


「へ!?」


素っ頓狂な声を上げてしまった私は、慌てて手で口を押さえながら横を向く。


私の目が捉えたのは、


「何してんの」


青いリュックに同じ高校の制服、私よりも少し高い背に、風になびく金色の髪の毛。


滝口君が、神社の鳥居の影に隠れるようにして立っていたんだ。


「滝口君?おはよう、そっちこそ何してるの?」


あまりに驚いたのとその相手が滝口君だったから、心臓の鼓動が治まらない。


胸を押さえながら尋ねると、


「いや、俺はお前に聞いてんだけど」


彼の口からは、相変わらずの台詞が飛び出す。


「あ、私は別に、…願いごと、してた」


こんな朝っぱらから神社に居るくせに何もしていない、なんて言ったら、それこそ此処の跡取りである彼の機嫌を損ねそうだから。


一応正直に報告すると、


「へー、ミナミが神頼みね。何願ったんだよ」


と、鳥居に寄りかかって腕組みをした彼からどこか馬鹿にした様な声が降ってきた。


「願いごとって他人に教えるようなものじゃないでしょ!」


私も、負けじと言い返す。


「そうだっけ?でもどうせ、“古文で赤点取らないように”とかだろ」
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