あなたの落とした願いごと
いつもなら悪口の一つや二つが投下されるはずが、打って変わって普通の声が鼓膜を震わせた。
「う、うんっ」
多分大丈夫、彼は機嫌を損ねてない。
耳に全神経を集中させていた私はほっと息をつき、彼の紡ぐ言葉に耳を傾けた。
「まず、俺の神社に祀られてるのは“猿田彦大神(サルタヒコオオカミ)”って神」
私の左隣、つまり車道側を歩く滝口君は、真正面を見据えながら長く複雑な神様の名前を口にする。
(サルタヒコ…?)
なるほど猿を祀っているんだね、なんて言った暁には、私と二度と口を利いてくれなくなりそうだから控えておこう。
「猿でも祀ってると思ってるだろうから訂正しとくけど、猿田彦は立派な神だ。でも、その容姿は人間とは少し違う」
(っ、)
滝口君の立派な推理ぶりに、足が止まりそうになった。
ご名答、さすが馬鹿な私の事を良く理解している。
でもそれと同時に、彼の声色がどんどん強く明るくなっていくのが手に取るように分かって嬉しくもなる。
「さすがのお前も天狗は分かるよな?…猿田彦は鼻が長くて、まるで天狗のような見た目をしていたと言われてる」
「天狗…」
そっと呟けば、隣の天才が頷いたのが視界の端に映った。
「猿田彦は、太陽の神である天照(アマテラス)の孫が、天界から地上界に降りてきた時に道案内をした神で、
今では、物事を良い方向に導く“みちひらき”の神として信仰されてるんだ」
「う、うんっ」
多分大丈夫、彼は機嫌を損ねてない。
耳に全神経を集中させていた私はほっと息をつき、彼の紡ぐ言葉に耳を傾けた。
「まず、俺の神社に祀られてるのは“猿田彦大神(サルタヒコオオカミ)”って神」
私の左隣、つまり車道側を歩く滝口君は、真正面を見据えながら長く複雑な神様の名前を口にする。
(サルタヒコ…?)
なるほど猿を祀っているんだね、なんて言った暁には、私と二度と口を利いてくれなくなりそうだから控えておこう。
「猿でも祀ってると思ってるだろうから訂正しとくけど、猿田彦は立派な神だ。でも、その容姿は人間とは少し違う」
(っ、)
滝口君の立派な推理ぶりに、足が止まりそうになった。
ご名答、さすが馬鹿な私の事を良く理解している。
でもそれと同時に、彼の声色がどんどん強く明るくなっていくのが手に取るように分かって嬉しくもなる。
「さすがのお前も天狗は分かるよな?…猿田彦は鼻が長くて、まるで天狗のような見た目をしていたと言われてる」
「天狗…」
そっと呟けば、隣の天才が頷いたのが視界の端に映った。
「猿田彦は、太陽の神である天照(アマテラス)の孫が、天界から地上界に降りてきた時に道案内をした神で、
今では、物事を良い方向に導く“みちひらき”の神として信仰されてるんだ」