S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
1章:2人の関係

 精悍で非の打ちどころのないような整った顔だち。清潔感のある短髪に、185を超える高身長。さらに静かな低音の声が心地いい。

 その男らしい目に射抜かれ、声をかけられると、どんな女性も一瞬で恋に落ちるらしい。
 私だって、ドキリとしたことは何度もある……。つまり、顔がいい男はそれだけで得なんだろう。

 だけど、そんな女性らしい感情を上回るほど、私はこの目の前に座る男は食えない男だと思っている。私に意地悪しようとするときには、とても楽しそうな笑顔を口元に浮かべる、この男が。

「じゃ、頼んだよ。七瀬さん」

 そう言って差し出されたのは、次の人事研修の書類。
 もう3日後に日程が差し迫ってるのに、講師が突然、身内に不幸があってくることができなくなってしまった。

 海外勤務の社員もわざわざこの日に合わせて日本に来るので、日程はすぐに変更できるものではないし、代打の講師は見つけるのが容易ではないのは誰もが知るところだ。
 それは大手北条グループの社員研修は、研修と言えど講師も内容も洗練されたものでなければならないから。

 先ほど目の前の男から無茶振りされた、否、頼まれた仕事はその代打の講師を探すこと。
 今から講師を探すのなんて、間違いなく苦労する。3日前の今から……。
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