S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
慌てて要さんを押しても、要さんはそれを辞めてくれない。手を振って暴れても、その手を掴んで壁に縫い付けられただけだった。
何度も何度もキスされる。
苦しくていつのまにか目に涙が浮かんでいた。
「ぶ、部長!」
「名前で呼べ」
「でもここは会社だしっ……ぅんっ!」
もう一度キスされて、さらに口内に舌まで入れられる。
いつも要さんとするキスは恥ずかしいけど、嬉しくて、幸せで、気持ちいいのに。
これは全然違った。
苦しくて、やめてほしくて、怖くて……私は要さんの胸を思いっきり押す。
やっとやめてくれた時、私は涙を手で拭って要さんを睨む。
「なんですかっ、何するんですか……」
でも、要さんは何も言わない。
「な、何を怒ってるんですか」
「いろはが、そんなことも分からないからだ」
「……なにそれ」
なんで私が悪いみたいに言うの。
こんなことをこんなところでして、会社では秘密にするってルールを破ろうとしたのは、要さんじゃない。
そう思うとやけに悲しくて泣きたくなる。
「こんなところでこんなことする要さんなんて……もう、もう……絶交です! 大嫌いですから!」
私は資料室で外に声が聞こえないことをいいことに思いっきり叫ぶと、要さんを思いっきり押して、資料室から飛び出た。