S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

 私は慌てて靴を脱ぎ、鞄を取り出す。

「ちょ、わ、私、帰ります!」

 そんな私を三堂さんはパシリと止めた。

「えー、絶対だめよ。先輩命令。だって、私が部長に怒られそうだもん」
「そんなこと言われても!」

 私が涙目で言うと、三堂さんは、ふう、と息を吐く。

「この子は……行動力があるのか、ないのか」

 そう言って、続けた。

「恋愛初心者の七瀬さんに、いいこと教えてあげる」
「い、いいこと?」
「相手の気持ちも自分の気持ちも確かめるには、じっと相手の目を見つめるのよ、10秒間。それで、なんとなくわかるわ」
「……10秒間?」

 そう呟いたとき、三堂さんが手を挙げた。

「部長! こっちです」

(とてもお早い到着ですね!)

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