S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

―――次の週の月曜。

 如月さんと会社の廊下を歩いていると、ひときわ目を引く綺麗な女性が歩いていた。

「……あの人だ」

 私は思わず足を止め、呟く。
 すると、隣にいた如月さんが、あぁ、と声を上げた。

「ロンドン支社の槙野佳奈美副支社長だな。俺が営業にいた時に研修担当があの人でさ」
「副支社長……佳奈美……」

「女性で若くして副支社長に抜擢。かなり優秀なんだよ」

 間違いない。
 あの時、要さんは『カナミ』と呼んでいた。

 私が見ていると、如月さんが言う。

「そういえば槙野さんって……昔、北条部長と付き合ってるって噂があったぞ」
「……」

(やっぱりそうか……)

 分かってたことなのに、胸の奥が灰色に染まる。

「な? 言ったろ? ああいうタイプと、七瀬。全然違うだろ?」

 如月さんが諦めさせるように言う。
 私はむすっと頬を膨らませて、ふい、と反対を向いた。

「わ、分かってます。そんなこと」

 そんなこと、最初から分かってる。
 分かってて、私は追いかけるようにここにきてしまったのだ。

< 191 / 283 >

この作品をシェア

pagetop