S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
―――次の週の月曜。
如月さんと会社の廊下を歩いていると、ひときわ目を引く綺麗な女性が歩いていた。
「……あの人だ」
私は思わず足を止め、呟く。
すると、隣にいた如月さんが、あぁ、と声を上げた。
「ロンドン支社の槙野佳奈美副支社長だな。俺が営業にいた時に研修担当があの人でさ」
「副支社長……佳奈美……」
「女性で若くして副支社長に抜擢。かなり優秀なんだよ」
間違いない。
あの時、要さんは『カナミ』と呼んでいた。
私が見ていると、如月さんが言う。
「そういえば槙野さんって……昔、北条部長と付き合ってるって噂があったぞ」
「……」
(やっぱりそうか……)
分かってたことなのに、胸の奥が灰色に染まる。
「な? 言ったろ? ああいうタイプと、七瀬。全然違うだろ?」
如月さんが諦めさせるように言う。
私はむすっと頬を膨らませて、ふい、と反対を向いた。
「わ、分かってます。そんなこと」
そんなこと、最初から分かってる。
分かってて、私は追いかけるようにここにきてしまったのだ。