S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

 私は慌てて自分の身体を覆い隠した。

「や、やだっ! 出て行ってください! み、見られたくない!」
「いつも見てるのに?」

 その声がいつもより低いことに私は気づいていなかった。

「それでもっ……今は、やだっ」
「何故?」

(私みたいに子どもっぽいの……見られたくない。愛想つかされる)

 その時の私は、自分の身体と槙野さんの身体を比べて幻滅されるのが嫌だった。
 ただ恥ずかしくて、要さんを押し出そうと手に力を込めて押す。

 しかし、その手を痛いくらいの力で掴まれて、そのままバスルームの壁に縫い付けられた。

 驚いて要さんを見あげると、要さんは眉を寄せ、心底不機嫌そうな顔をしている。
 私はそれを見て、胸が苦しくなって泣きたくなる。

(これ以上見ないでほしい。要さんに知られたくない)

 そう思ったのに、要さんは突然、

「それは如月とコソコソしていることに関係しているのか?」

と低い声で言った。
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