S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
「……へ?」
予想外の言葉に、私はきょとんと要さんを見つめる。
そして、どういうことですか、と小さくつぶやくと、要さんはさらに眉を寄せた。
「いろはが言いたくないっていうなら、それでもいい。自分から言いたくなるようにするだけだから」
その冷たい言い方に、背中に汗が流れた気がした。
要さんはそんなことお構いなしに、私の首筋に口づけ、それから全身にキスを落としだす。
「好きだ。二の腕も、胸も、このかわいい手も……」
その言葉に泣きたくなる。
要さん、なんで今、そういう事言うの?
顔をそらして、首を横に振っても、要さんは決して辞めようとはしてくれない。
それどころか、もっと全身にキスを落としだす。
「全部、好きだから。いろはの全部、誰にも知られたくない」
私だって、要さん以外に知られる気はないよ?
でも、要さんは誰かと比べて私に幻滅する日が来るんじゃないかって、それが不安で……。
そう思ったとき、要さんは私の目をまっすぐ見て言った。
「だから俺こそ、本当の自分を知られるのが怖いんだ」
また予期していなかった言葉に固まる。
(要さんも、怖いの? なんで……)
そう思ったとき、突然唇が奪われる。
「んんっ!」
激しく何度もされるキスに、息もできないのに、顔が、身体が、どんどん熱くなる。
訳が分からないまま、それでも私はそのキスに、必死に縋るように応えていた。