S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
私はシーツを、ぎゅ、と掴んでいた。
「き、昨日だって、あんな変なことしてっ! あんなのルール違反です!」
思わず昨日のことを蒸し返すと、要さんは不思議そうな表情で返してくる。
「あぁ、舌を入れたこと? あれくらいで、あんなに動揺するなんて思いもしなかった」
「なにをそんなに普通みたいに……!」
「普通のことだって」
そう言って、要さんの手が私の腕を掴む。
ぐい、と引き寄せられると、少し無理矢理に唇を合わされた。
「やっ! んんっ……」
ぴちゃりと舌が口内に入る。
今まで、唇を合わせるだけだった。普通、と言うからには、きっとこれもキスの延長線上のようなものだったのだろう。
だけど、突然、おかしなくらい胸が鳴る。昨日の驚きだけではない、おかしな感覚。顔が熱くて、掴まれてる手も熱くて、悲しくもないのに泣きたくなる。
ふわふわして、自分がとりとめもなくどこかに飛んで行きそうで怖い。すごく苦しいけど、でも、ほんの少しだけ、もう少しこうしていたいと思う感情がそこに混じる。
そんな感情知りたくない、とそっぽを向こうとすれば、それがわかったかのように要さんがちょうど唇を離した。
その瞬間、私は目の前の要さんの唇が不思議と名残惜しくなる。
「息しないと苦しいだろ、鼻で息して?」
「やだっ」
「大丈夫だから」
何が大丈夫なのだ。
現状、全く大丈夫ではない。熱くて苦しくて叫び出したくなる。
なのに、その要さんの低い声に絆されるように、私は頷いてしまう。
次の瞬間、嬉しそうな顔の要さんと目が合った。
「んんっ……」
それからもう一度、その大胆で濃厚なキスをしていた。