S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
ドッドッドッドッ……と心臓の音がやっぱりうるさい。
少し前まで、いや、昨日までは、自分からそんなこと言うとは思いもしなかった。でも今、そうしたいって思ったから。
なのに要さんは私の髪を撫でると、まっすぐ私と目を合わせて口を開く。
「今日はやめておこう」
「え……? ど、どうして!」
(私、せっかく覚悟を決めたのに!)
泣きそうな顔で要さんを見ると、要さんは私の頬に優しく触れる。
「いろは、無理してるから」
「してないです! だからっ、大丈夫だって言ってます……んんっ!」
突然、口づけられて視界が反転した。
同時に手を取られ、その手にキスされる。
「いろは」
ちゅ、と手の甲へキスされて、それから、額にも。
そう思ったら、要さんは私にキスをするのをやめてしまった。