S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
その時、要さんが私の隣に来て、祖父に頭を下げる。
「七瀬会長、ご無沙汰しております」
「あぁ」
そう言って祖父は、少し考えると、
「……いろはは、迷惑をかけていないか」
「迷惑なんてとんでもない。いろはがここまで素直に育ってきたのは、会長の愛情のおかげだと思っています」
要さんがそう言ったとき、祖父は眉を寄せ、複雑そうな顔をする。
祖父のそんな表情を始めて見て、私は戸惑った。そんな私をチラリと見て、祖父はひとつ咳払いをし、ではな、と行ってしまった。
「おじいさま、どうしたんだろう。なにか様子が変だったような」
「そう? あまり変わらないと思うけどな」
そう言って要さんは微笑む。「まぁ……俺なんかに、手塩にかけて育てたかわいい孫娘を取られたんだから複雑だろう」
『なんか』って……。
むしろ家柄を考えれば、他のどこよりも北条グループに嫁いでくれる方が祖父としては嬉しかったはずだ。
「そうじゃないと思いますけど。むしろ、嬉しいことでしょう?」
私が呟くと、要さんは苦笑して私を見ていた。