S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

 二人で挨拶に回り、それからやっと落ち着いたとき、

「要! いろはちゃん!」

と突然声が聞こえた。

「佳奈美」
「槙野……さん」


 そこにいたのは、槙野さんだったのだ。
 
(なんでここに槙野さん……!)

 もしかして、要さんが呼んだの? それならそれで落ち込む。
 しかし、落ち込んでいる場合ではなくて、結婚していることがばれないように、私は慌てて手を横に振っていた。

「あ、あの、これは……!」

 槙野さんは、そんな私に近づき、それから、

「要ってすごく粘着質だから苦労してるでしょ? 嫌なことされたらちゃんと私に言うのよ?」

と言う。

「粘着質なんて人聞きの悪い。いろはしか見えてないだけだ」

 要さんがそれに眉を寄せて返す。

「……はい?」

(ちょっと待って、全く話が読めない。色々と、読めない……)

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