S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
 そして、あの時電車に乗るのに戸惑って、そこで要さんに出会った。

「いろはがそう決めなければ、あそこで会わなかったんだな」
「でも要さんは覚えてないんですよね? 助けてくれた時のこと」
「覚えてたさ、もちろん」

「……へ?」

 私は要さんの顔を見る。

「なら、どうして言ってくれなかったんですか!」
「覚えてない、とは言ってない。直接話したのはあそこが最初だったし、覚えてるさ。鮮明にな」
「えぇ……」

 私が眉を寄せると要さんはクスリと笑う。
 なんだか要さんの手のひらの上を転がっていたみたいで少し解せないけど、それでも、要さんもあの日のことを覚えてくれていたのは嬉しいなんて思ってる。

 その時、要さんは私の頬を大事そうに撫でた。

「俺は、いろはがいることが自分のモチベーションになってる」
「私も、要さんがいたから、仕事もここまで好きになれて、頑張れたんだと思ってます」

 でも、本当にそうなら……もしかして、仕事と子どもどちらか選ぶんじゃなくて、二つを選ぶ未来もあるんだろうか……。

 そんなことを考えていると、要さんは私の額にキスを落とした。
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