S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
そう思っていると、要さんは全体に向かってもう一度口を開く。
「それでと言うわけではないがもう一つ」
(もう一つ……?)
要さんの言葉に私は首を傾げる。
そんな私と目が合うと、要さんは目を細めて続けた。
「次の異動で、俺はここを異動することになる」
「異動!? ちょっ! え……? 急に何言いだして……」
(それも聞いてない!)
私が青ざめていると、
「やっぱりもう役員になられるんですね」
「あぁ。正式に内示が出てな」
そう言って、要さんは微笑んだ。
「やっぱり、って」
私は三堂さんに聞く。
三堂さんは顎に手を当てて呟いた。
「うーん、これは感覚としか言いようがないけど、上の人事が動く時ってグループの役員を社内でよく見かけるのよ。ほら、槙野さんも戻ってたでしょ? 確信はなかったけど、次に役員に決まるなら部長だろうし、ポストは……副社長か専務ってとこかなって」
三堂さんは本当に勘がいいし実力もある。
そんな三堂さんだからこそ先にその空気を感じ取っていたんだろう。