S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

 社員研修当日。
 研修を終え、講師にお礼を言って会社前に迎えに来てもらったタクシーまで講師を送ってから、人事部に戻った時、三堂さんが私に飛びついてきた。

「研修、すごいいい評価だったよ! 特に海外組が使ってみたいって喜んでた。全然歴代講師がつかまらないって聞いてたから心配してたけど、研修内容変えて、茶道なんて驚いたわ」

 そう、研修の歴代講師は3日前と言うこともあり、全然つかまらなかった。
 もちろん、歴代講師も一流だ。私のようなこれまでかかわりがなかった人間の無理を聞いてくれるような一流の人間などいない。

 私はそれをなんとなく分かっていて、先に自分がプライベートでずっとお世話になっていた茶道の家元に連絡を取っていた。
 研修は平日だし、時間も午前中。最近インスタも始めたみたいで、この数日は自宅でお弟子さんに教えていることもチェックした。もしかしたらいけるかもしれない、と思って連絡をとっていたのだ。

 少し難色を示されたが、なんとか、と頼み込み続けて、当日は雑誌のインタビューだけだったので、それを会社でできるようにと雑誌の出版社の方とも調整した。会社の宣伝にもなって一石二鳥だった、と広報部の方に笑われた。

「ちょっと知り合いで……念のために先にスケジュールを聞いておいたんです」
「しかも、イケメンの家元なんて……。女子社員たち色めきだってたわよ」

 これまではお父様が家元だったのだが、昨年、家元の息子であった菊上明先生が家元を受け継いだ。
 明先生は私が幼いころからずっと茶道を習っていた先生で、
 もともと『イケメン茶道家』なんて騒がれていたけど、家元になってさらに雑誌や講演に引っ張りだこだそうだ。
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