S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

―――今夜、7時。地下駐車場。

 こんなふうに会社帰りに約束したことはこれまでなかったし、あんな感じで耳打ちされると、ドキリとしたのも事実だ。

(まるで恋人みたいだった)

 実際は恋人ではなく、夫婦なんだけど。

 でも、私はそれから約束の時間までやけに時間がたつのが遅く感じ、そわそわしていた。

 何度か時計を見ながら、研修の経費精算をこなし、6時50分になったころ、バタバタと席を立つ。

 要さんの席を見ると、要さんはもういなかった。隣にいた三堂さんに頭を下げる。

「お先に失礼します」
「やけに慌てて帰るのねぇ」
「はい。ちょっと用事で」

 私は鞄を持ち、髪と服装を簡単に整えると、人事部を出る。

 私がいなくなった後、三堂さんが「あれは……男ね」と呟き、如月さんが「えぇ……」と眉をひそめていたことは全く知らない事実だ。
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