S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
地下駐車場は社屋の地下3階にある。
社員は基本的には車で通勤せず、通勤するとしても社屋の近くにある月ぎめ駐車場を借りている。それでも地下に駐車場があるのは、大切なお客様がいらしたときと、役員用だった。
要さんも普段は車通勤ではないが……今日はお茶菓子の受け取りをお願いしていた件もあり、車で出勤してくれていたのだ。
私が駐車場に慌てて向かうと、要さんの車の中で要さんが電話していて、私に気づくとその電話を切った。
「お待たせしました。電話、お仕事じゃなかったんですか? 大丈夫でした?」
「あぁ、問題ない。乗って」
そう言われて、私は、失礼します、と言って助手席に座る。
「他の社員に、み、見つかりませんかねぇ」
「地下駐車場はほとんど一般社員は使わないから。見つかっても親族は俺たちのことは知ってるし」
そう言って要さんは微笑む。
「そうですけど」
私たちは政略結婚だ。
北条グループも七瀬モーターズも、近しい親族だけはその事実を知っている。
(それでもドキドキはする。いや、このドキドキはそれだけが理由じゃないのかなぁ…)
要さんの運転する隣に座るのは、実はまだ数えるほどしかなくて、私は少し緊張していたのかもしれない。