S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

 それからウェイターに案内されて、私たちは窓際の席に案内される。同時に、ピアニストも出てきて、ピアノの演奏も始まった。

「キミが好きそうだと思ってね。予約しておいた」
「なんで好きそう、ってわかったんですか」

 自分もピアノを弾いていたので、いまだにピアノの音を聞くのは好きだ。しかし会社でも家でもその類の話をしたことはない。

「イメージ、かな」
「それに、予約って……今日、研修が成功するかもわからなかったのに」

 私が呟くと、

「成功させるつもりだったんだろ」

と要さんは笑う。

 そうですね、と頷き、私も微笑み返す。上司で夫のこの男の人は、私のことをよくわかっている。それがなんだか、すごく悔しくて、少し嬉しい。

 今回の研修は、成功こそしたが、結局、要さんをはじめ、たくさんの人の力を借りた。
 最初は人を頼る事に思い悩んだこともあったが、要さんに、自分の力だけで何とかしようとするより、うまく人に頼れるようになることのほうが大事だと言われたことがあったので、そうするようになった。
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