S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

 それから少ししてお料理が運ばれてきて、どの料理も間違いなくおいしかった。要さんが作るものもおいしいけど、外食は景色や雰囲気もあいまってまた違ったおいしさだと思う。
 でも少し、要さんの味に似ているものを感じた。

「おいしい!」
「ここはソースの味付けも繊細だから、自分で作る時の参考になるんだ」

 あぁ、だから、少し味が似ていると思ったんだ。私は納得しながら、シャンパンのグラニエを口に含んだ。これもおいしい。

「それにしても、そんな視点で料理を楽しんでいたとは……私はただおいしいって思うだけなのにさすがですね」

 私が言うと、要さんは、ふっと息を吐く。

「ほとんど病気だよ。こだわりすぎだと良く言われる」
「あ、この前も盛り付けの色合いがどうこうと10分くらい苦戦してましたよね」
「その間に料理が冷めてしまったのがいけなかった」
「冷めててもおいしかったですよ」
「でも、一番うまい状態でいろはには味わってほしかったし」

 そう言って、真剣な目に捉えられると、やけに緊張する。
 その感情が分からないように誤魔化して笑うと、「真面目ですね」とからかうように加えた。
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