S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
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―――半年前。
私は帝王国パークアット一階にある料亭で、着物を着つけられて、祖父と並んで座っていた。
さっきから、むすっとして、隣にいる祖父とは一言も口をきいていない。
何か言ってもかなわない人だと分かっているので、私は黙るしかできないのだ。
祖父はちらりと私を見ると、眉を寄せ
「見合いなんだから、もっとマシな顔をしなさい」
と言った。
「……急に、しかも勝手に決められたお見合いに、ニコニコ参加できるわけはないです」
私はできるだけ感情の抑揚のない声で返す。
「これで何回目だと思ってるんだ」
「何回お断りされたら諦めてくださるんですか」
そう、私はこれまで何度もお見合いをさせられている。
それは18歳から始まり、これまでに20人以上とお見合いをした。そしてそのすべてをお断り『されて』いる。
自分から断ると角が立つので、相手にお願いしてお断りしてもらっているのだ。
多分その事実を、祖父は知らない。と、私は思っている。