S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
「ど、どうしたんですか?」
「名前。呼ばないと、ルール違反になるけど? 仕事辞めたいのか?」
少し意地悪そうな笑顔で、挑発するようにそう言われる。
部長からは『本当はいろはには仕事をせずにずっと家にいてほしいんだけどな』と何度か言われていて、ことあるごとにこの手の意地悪な言い方はすでにされていた。
(ただ、私を辞めさせたいだけのクセに!)
結婚して気づいたが、部長は結構意地悪だ。
むっとしてそう思うが、自分だって、会社の癖が抜けずに『部長』とルールを無視して呼んでいたことに気づく。
(確かにルール違反をしたのは私だけど!)
「もしかして恥ずかしいのか?」
「まさか!」
別に名前なんて恥ずかしくも何ともない。
ただの記号だ。ただ呼び慣れてないだけだ。
そう思ったところで息を吸い、
「か、要さん。要さんはここでお休みになってください。私はソファで」
とはっきり言う。
要さんは、首を傾げた。私はその様子にまたむっとする。
(名前を呼んだのに、次は何よ!)