S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

「なにするんですかっ!」
「……誰が、好きじゃないなんて言った」

 低い声でそう言って、要さんは不愉快そうに眉を寄せる。
 その様子に、私の胸がズキン、と低い音を立てる。

「だ、だってこれは政略結婚で……私はただ、仕事を続けたいからこの話を飲んで。要さんだって出世のために結婚したんでしょう?」

 私が首を傾げると、

「違う」

とはっきり要さんは言った。

(……ち、違う?)

「……なら」
「俺は、いろはのことが好きだから結婚したんだ。そうでなければ結婚なんてしない」

 その声色も、要さんの顔からも、嘘をついているような様子はない。
 そもそも、私たちのルールの中に、『結婚後、二人の間で嘘をつかないこと。』というものがある。
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