僕らの夏を奪われる事がないように
ー夏の前兆ー
ドーン
空から花火の音が聞こえてくる。
今日は年に一度僕の地域である夏祭りが開催されている。
そんな日にも、1人が好きな僕は美しい写真が撮りたくて学校まで来ていた。
いつでも屋上が開けれるのは天文部の特権だ。
ガチャ
扉を開いた途端、いつも通り静かな屋上が広がっているのだと、そう思っていた。
先客が居るなんて数秒前の僕は考えてすらいなかった。

彼女は立っていた。ただ立って、鮮やかな円を描いてる空を見つめていた。とても寂しそうに、辛そうに、そんな雰囲気とはそぐわない色を浮かべた目をして。
1度も目をあわせた事のない彼女の目は思っていたよりも美しくて儚くて、魅力的だった。
そんな彼女は僕の存在に気づかずただただ空だけを目に映し出していた。

この時、僕は自然とカメラのピントを彼女に合わせてしまっていた。
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