The holiday romance

情と愛

ハジメと話し合ったところで離婚はしないの一点張りで埒があかなかった。

ユキはすぐに家を出てしばらく実家で暮らすことにした。

両親に迷惑をかけたくないとも思ったが
ユキには他にどこにも行く場所がなかった。

ユキの両親は突然帰ってきて泣いて暮らすユキを見て余程なことがあったんだろうと察して何も聞かなかったが
ある日、ユキは突然ハジメの両親に逢いに出かけた。

そしてそこで離婚したいと申し出た。

「ユキさん、いきなり離婚したいって…
理由は一体何なのかね？

ハジメが何かやらかしたのか？」

「いいえ、私の問題です。
私が…ハジメさん以外の人と関係を持ったんです。」

ユキの話を聞いたハジメの両親はその場にすぐハジメを呼んだ。

「ハジメ、一体どういうことなんだ？

ユキさんが言ったことは本当なのか？

ユキさんの不貞はお前にも責任があるんじゃないのか？

とにかく離婚なんて話はそんな簡単に決めることじゃない。」

ユキはハジメの愛人のことや手術のことを離婚の理由にしなかった。

ただ自分が若い男と不貞行為をしたことをハジメに知られたと言った。

それにはハジメの両親もかなり驚いたが
ハジメのことでユキには償いきれない負い目があるので何とかことを丸く収めようとしていた。

「お父さん、ユキの言ってることは本当ではありません。

ユキが不貞なんて有り得ませんよ。

ただユキは俺やお父さんが隠してた秘密を全部知ってしまったんです。

だから深く傷ついてしまった。

もう五明の家は信じられないそうです。

当たり前ですよね。」

あんなに離婚したくないと思っていたハジメだが、この離婚話でユキの気持ちより
損得勘定をしている両親を見てユキを自由にしてあげたくなった。

自分達のせいで苦しむユキをこれ以上この家の犠牲にしていいものなのかと考えてしまう。

「俺が間違ってました。

やっぱりこの結婚はするべきじゃなかったんです。

あの時、お父さんがマユコを愛人にすれば良いって言ったのを覚えてますか？

それを知った時のユキの気持ちまで考えましたか？

それどころか俺が子供を作らないと言った時は
もう跡取りはいるから好きにしろって言いましたよね？

このことをユキのご両親が知ったらどうなると思いますか？

あんなにユキを頼みますって信じて嫁にくれたのに…俺たちは利益のためにユキを騙して…許されると思いますか？」

ハジメの父は何とかユキを宥めようとしてその場を取り繕ったが修復するには傷が大きすぎて
どうにもならなかった。

ユキをその日のうちに一旦実家に帰し、
ハジメはユキとユキの両親に謝罪した。

ユキの両親はユキが帰ってきた本当の理由を知ってかなりのショックを受けていた。

「離婚するなら止めないわ。

いいえ、むしろ離婚して欲しい。

ハジメさんがそんな人だったなんて。」

ユキの母はかなり怒っていたが
父は何も言わずに肩を落としていた。

「こんなことになってごめんなさい。」

ユキが謝ると父はユキに言った。

「ユキ…これからどうしたい？

本当に別れるというなら私から五明さんに話そう。」

ユキはあんなに別れたいと思っていたのに肩を落とした父の姿を見るとこのまま別れていいのか不安になった。

「お義父さんの仕事に必ず影響が出る」
そう言ったハジメの言葉を思い出してしまう。

辛そうな両親の顔を見ると人のいいユキは自分が我慢すれば良いのか悩んだ。

「お父さん、もし離婚したらお父さんは大丈夫なの？」

「そんなことは考えなくていい。

五明さんに縁談の話をもらった時、
私はお前の気持ちより自分の仕事のことを先に考えてしまった。

お前は嫌な顔もせず、ハジメくんに会うと言ってくれた。

そして結婚すると言ってくれてホッとしたんだ。

お前の気持ちを一度も聞かなかったよな。

ユキには本当に酷いことをしてしまった。」

ユキの父は酷く傷ついたユキを見て居たたまれなくなった。

愛する娘が受けた傷を思うと仕事のことなどどうにでもなると思った。

ユキはそんな父の姿を見てこのまま自分の気持ちを押し通していいものか迷いが生じた。

そしてユキの心の整理がつかないまま
しばらくしてハジメから連絡が来た。

「一度逢って話をしよう。」

ユキはハジメと話し合いをするために家に戻った。