The holiday romance
決心
家に戻るのはあの日以来だった。
家政婦さんを増やしたのか家は隅々まで綺麗になっている気がしたがその分生活感はなくなっていた。
ここにはもうユキの居る場所は無い気がした。
「マユコとは別れたよ。
あんなに反発してたのに
向こうももう何の未練もなかったみたいだ。
別れたからってもちろんユキと簡単にヨリが戻せるなんて思ってないよ。
ただオレは…ユキが北海道に行って
札幌のホテルの部屋の人数変更をしたって知った時、すごく動揺した。
そして若い男と一緒に旅してると聞いて嫉妬したんだ。
自分が思ってるよりずっとユキが大切だったんだとあの時初めて気がついた。
もちろんユキの気持ちが一番大切だってわかってる。
簡単には許してもらえないってこともね。
でもユキはただのお飾りなんかじゃなくてそこにちゃんと愛はあったってわかって欲しい。」
ハジメが何を言ってもユキの心には届かなかった。
もう何を言っても遅いのだ。
ユキの気持ちはもうここに戻ることは無い。
「ごめんなさい。
別れてください。」
ユキが泣いてハジメがその涙を拭った。
「本当にごめん。
こんなに泣かせてしまって…
こんなに傷つけて。
もう少しだけ考えてくれないかな?」
ユキは何回も横に首を振った。
ハジメはもうユキが戻ることはないと悟った。
そしてハジメに送られて実家に戻った。
帰りの車の中でユキは俯いたまま一言も話せずに何度も涙を拭っていた。
ハジメはそんなユキを見て胸が苦しかった。
自分のせいでここまで傷ついたユキを縛れないと思った。
「わかったよ。ユキの言う通りにするよ。
もう本当にダメなんだな。
…ごめん。
今まで本当に悪かった。」
ハジメはユキの両親に土下座して別れることを告げた。
そして慰謝料やら何やら面倒な話は弁護士同士で話し合い、
半年後、2人の離婚がようやく成立した。
ハジメの両親は最後まで離婚に反対して
ユキの父親の会社はそれなりに痛手を負った。
しかしユキの父はすぐに海外で新しいパートナーを見つけて事業を見事に立て直した。
五明グループの次男が離婚した話は富裕層の間でちょっとしたニュースになった。
暇を持て余してる退屈な一部の知人からユキの元へ
沢山の連絡が来るようになった。
ユキは真相を知りたがる人たちから逃げるように実家を離れることにした。
「少し旅に出てくるわ。」
両親も今のユキの立場を察して
快く送り出してくれた。
そして悩んだ結果、ユキが向かった先はシンに出逢った北海道の地だった。
季節は冬に変わり、あたりは雪景色に変わっていた。
ユキはシンと旅した思い出を辿るように同じルートを回った。
1日めは札幌で同じホテルの同じ部屋を取った。
大きな鏡と透明なシャワールームを見て
シンと初めて愛し合った夜を思い出した。
あの日、鏡に映った自分は
快楽に溺れて本能の赴くままシンに抱かれ
初めての感覚を知った。
ユキはシャワーを浴びようと鏡の前で服を脱ぎながら、色んな場所に触れていくシンの指を思い出してしまう。
またあんな風にシンに抱いて欲しいと願ったその時、電話が鳴ってユキはびっくりして思わず電話を取った。
電話の相手はハジメだった。
五明の嫁でいた頃の電話は解約してあの頃の知り合いとは全て連絡を断ったのにハジメはユキの新しい携帯番号を簡単に手に入れていた。
ハジメの声はかなり久しぶりだったが、すぐにハジメだとユキにはわかった。
「今、北海道だよな?」
「え?」
もう夫でもないくせに相変わらず簡単に電話番号も行き先も調べられてユキは少し怖くなった。
「離婚の騒ぎで実家を離れたんだろ?
迷惑かけてごめん。
一言謝りたくて…。」
「相変わらず簡単に調べられるのね?
私の居場所。」
「調べてないよ。
さっきお義母さん…
いや、ユキの実家に連絡して聞いたんだ。
一言謝りたくて…。」
「そう。案外正当なルートで知ったのね。」
ユキは少しホッとしたが、まだハジメと普通に話せるほど許しては居なかった。
「でも私は平気よ。
何言われても、くだらない噂を流されても…あの頃の人たちとは連絡を断ってるし、ここには届かないから。」
「そうか。」
「あの頃の噂好きな人たちとはもう会うこともないからあなたも安心して。」
「ユキはやっぱり思ったより強いんだな。
お詫びに一つ教えてあげるよ。
例の彼、小樽にいるよ。
小樽の街で働いて、暮らしてる。」
「え?」
さすが五明グループだ。
ユキが何も知らなかったシンのことを会ったこともないハジメは簡単に調べられる。
「それ以上は悔しいから教えないけどな。
もし、縁があるなら彼に逢えるんじゃないかな?
逢えなかったら縁が無かったってことだな。」
逢える保証はないが、
ユキは次の日小樽に旅立った。
小樽運河に行き、辺りを見回した。
この街にシンが居ると思うと景色よりも通り過ぎる人を見てしまう。
だけど小樽のどこに居るかもわからないシンと簡単に逢えるはずはなかった。
家政婦さんを増やしたのか家は隅々まで綺麗になっている気がしたがその分生活感はなくなっていた。
ここにはもうユキの居る場所は無い気がした。
「マユコとは別れたよ。
あんなに反発してたのに
向こうももう何の未練もなかったみたいだ。
別れたからってもちろんユキと簡単にヨリが戻せるなんて思ってないよ。
ただオレは…ユキが北海道に行って
札幌のホテルの部屋の人数変更をしたって知った時、すごく動揺した。
そして若い男と一緒に旅してると聞いて嫉妬したんだ。
自分が思ってるよりずっとユキが大切だったんだとあの時初めて気がついた。
もちろんユキの気持ちが一番大切だってわかってる。
簡単には許してもらえないってこともね。
でもユキはただのお飾りなんかじゃなくてそこにちゃんと愛はあったってわかって欲しい。」
ハジメが何を言ってもユキの心には届かなかった。
もう何を言っても遅いのだ。
ユキの気持ちはもうここに戻ることは無い。
「ごめんなさい。
別れてください。」
ユキが泣いてハジメがその涙を拭った。
「本当にごめん。
こんなに泣かせてしまって…
こんなに傷つけて。
もう少しだけ考えてくれないかな?」
ユキは何回も横に首を振った。
ハジメはもうユキが戻ることはないと悟った。
そしてハジメに送られて実家に戻った。
帰りの車の中でユキは俯いたまま一言も話せずに何度も涙を拭っていた。
ハジメはそんなユキを見て胸が苦しかった。
自分のせいでここまで傷ついたユキを縛れないと思った。
「わかったよ。ユキの言う通りにするよ。
もう本当にダメなんだな。
…ごめん。
今まで本当に悪かった。」
ハジメはユキの両親に土下座して別れることを告げた。
そして慰謝料やら何やら面倒な話は弁護士同士で話し合い、
半年後、2人の離婚がようやく成立した。
ハジメの両親は最後まで離婚に反対して
ユキの父親の会社はそれなりに痛手を負った。
しかしユキの父はすぐに海外で新しいパートナーを見つけて事業を見事に立て直した。
五明グループの次男が離婚した話は富裕層の間でちょっとしたニュースになった。
暇を持て余してる退屈な一部の知人からユキの元へ
沢山の連絡が来るようになった。
ユキは真相を知りたがる人たちから逃げるように実家を離れることにした。
「少し旅に出てくるわ。」
両親も今のユキの立場を察して
快く送り出してくれた。
そして悩んだ結果、ユキが向かった先はシンに出逢った北海道の地だった。
季節は冬に変わり、あたりは雪景色に変わっていた。
ユキはシンと旅した思い出を辿るように同じルートを回った。
1日めは札幌で同じホテルの同じ部屋を取った。
大きな鏡と透明なシャワールームを見て
シンと初めて愛し合った夜を思い出した。
あの日、鏡に映った自分は
快楽に溺れて本能の赴くままシンに抱かれ
初めての感覚を知った。
ユキはシャワーを浴びようと鏡の前で服を脱ぎながら、色んな場所に触れていくシンの指を思い出してしまう。
またあんな風にシンに抱いて欲しいと願ったその時、電話が鳴ってユキはびっくりして思わず電話を取った。
電話の相手はハジメだった。
五明の嫁でいた頃の電話は解約してあの頃の知り合いとは全て連絡を断ったのにハジメはユキの新しい携帯番号を簡単に手に入れていた。
ハジメの声はかなり久しぶりだったが、すぐにハジメだとユキにはわかった。
「今、北海道だよな?」
「え?」
もう夫でもないくせに相変わらず簡単に電話番号も行き先も調べられてユキは少し怖くなった。
「離婚の騒ぎで実家を離れたんだろ?
迷惑かけてごめん。
一言謝りたくて…。」
「相変わらず簡単に調べられるのね?
私の居場所。」
「調べてないよ。
さっきお義母さん…
いや、ユキの実家に連絡して聞いたんだ。
一言謝りたくて…。」
「そう。案外正当なルートで知ったのね。」
ユキは少しホッとしたが、まだハジメと普通に話せるほど許しては居なかった。
「でも私は平気よ。
何言われても、くだらない噂を流されても…あの頃の人たちとは連絡を断ってるし、ここには届かないから。」
「そうか。」
「あの頃の噂好きな人たちとはもう会うこともないからあなたも安心して。」
「ユキはやっぱり思ったより強いんだな。
お詫びに一つ教えてあげるよ。
例の彼、小樽にいるよ。
小樽の街で働いて、暮らしてる。」
「え?」
さすが五明グループだ。
ユキが何も知らなかったシンのことを会ったこともないハジメは簡単に調べられる。
「それ以上は悔しいから教えないけどな。
もし、縁があるなら彼に逢えるんじゃないかな?
逢えなかったら縁が無かったってことだな。」
逢える保証はないが、
ユキは次の日小樽に旅立った。
小樽運河に行き、辺りを見回した。
この街にシンが居ると思うと景色よりも通り過ぎる人を見てしまう。
だけど小樽のどこに居るかもわからないシンと簡単に逢えるはずはなかった。