The holiday romance
第二の人生
ユキが小樽に着いてもう3日が過ぎた。
その間に2人で行った場所を何度も訪れ
近くの店も色々回ってみたが
どこにもシンの姿は無かった。
1人で入る客室露天風呂は物足りなく感じたし
シンと過ごした濃密な時間を思い出すと余計に寂しくなった。
ユキは夜の小樽の街に散歩に出かけた。
考えたら夜はホテルで食事を取るので外に出てなかった。
夜の小樽の街は冬になるとイルミネーションで青く染まっていた。
「綺麗。」
昼とは全く違った景色でユキは塞いでた気持ちが少し明るくなった。
その時だった。
「え?ユキ…さん?」
後ろから聞き覚えのある声がして振り向くとそこにシンが立っていた。
「嘘!?やっぱりユキさんだよね?」
あの頃から少し髪が伸びて雰囲気は変わっていたが
相変わらずのスタイルの良さと綺麗な顔立ちは間違いなくシンだった。
「え?…シンくん?」
「どうして?」
「どうしてって私が聞きたいわよ。」
シンは思わずユキを抱きしめた。
「ユキさんが忘れられなくてここで待ってました。
いつかまたここで逢えるって思ってた。」
ユキの瞳から大きな涙の粒がこぼれ落ちて
シンはユキにキスをした。
「奇跡みたいだ。
逢いたくて…ずっと…逢いたくてたまらなかった。
ユキさんのことあれから片時も忘れられなくて…ずっと…逢いたいって…」
ユキはその言葉をこれ以上聞いてられなくなって思わず自分からキスをした。
奇跡だと信じてるシンに元夫からシンの居場所を聞いたことは今は言わないでおこうと思った。
「シンくん、私も逢いたかった。
そうずーっと思ってた。」
ユキはシンをあの日みたいに旅館に連れ帰った。
シンは部屋に着くなり、ユキに言った。
「もう絶対離さないけど…いい?」
ユキは頷いてシンのキスを受け入れた。
「え?雪降ってきた!
じゃあ雪の降ってるうちにあの露天風呂にまた一緒に入ろう!」
シンはそう言ってユキの服を脱がしていく。
ユキはシンの髪にキスをして言った。
「シンくん…たくさん愛してね。」
シンが笑顔で頷いてユキに長いキスをした。
ユキはその夜、シンに離婚したことを告げた。
「もしかして俺を助けてくれたのってユキさん?
オレの辞めた会社ね、それと今勤めてる会社もユキさんの元旦那さんの会社の系列だった。」
「え?」
ユキはそれを聞いてハジメの顔が浮かんだ。
助けてくれたのはきっとハジメに違いなかった。
ハジメはシンのことを調べてるうちにシンが前に勤めていた会社が五明グループの傘下で情報を売ったことがバレて追い出されたという話しを耳に入れた。
しかし詳しく調べてもらうとそれはシンの仕業ではなくその部の部長が犯人だと分かった。
ハジメは真相を伝えて
その部長を懲戒解雇にして、小樽に居るシンには人を使って前より良い待遇で別の会社を紹介した。
そして部長の命令でシンを陥れた前の会社の上司は降格になり、シンに謝罪に行くように命じた。
「俺ね、あの時の濡れ衣晴れたんです。
誰かが上の人に話してくれたみたいで
それで親会社の弁護士さんみたいな人がもっと良い条件で就職を世話してくれて…
前の部長はクビになって元上司はわざわざここまで謝罪しに来てしてくれたんです。
助けてくれたのは大元の会社の偉い人だって聞いて調べてみたら、その大会社の社長の息子さんの結婚式の写真にユキさんが写ってて…
あんなすごい人がユキさんの旦那さんだったんですね。」
ユキはハジメがしてくれた事に感謝したが
あえてそれをシンには伝えなかった。
「私はシンくんと恋をしてこの半年、あの人と別れるために費やしたの。
離婚するのにそんな事、私からは頼めないわ。
やっぱり、ちゃんとシンくんを見てくれてる人が居たんだと思う。」
「そっか。
別れる人が協力してくれる訳ないね。
それにしても誰が助けてくれたんだろう?」
「シンくんは間違ってないんだからそんな事気にしないで堂々と新しいところで頑張って働けばいいのよ。
私もね、1人になったからこれからは好きなことして自由に生きるの。」
「うん。そうだね。
でも…1人じゃなくてオレがいるでしょ!」
そして2人は笑顔になってお互いの手を繋いで歩き始める。
その頃、ハジメは秘書から報告を受けていた。
「お二人は無事に逢えたようです。」
「そうか。ありがとう。下がっていいよ。」
秘書が出て行った後、ハジメは大きな溜息をついた。
自分の手を離れ、若い男と恋をしている元妻が心配でもあるし、もちろん失った淋しさもある。
自分の行いを何度悔いてももうユキは戻らない。
せめて見えない場所からユキに償い、不幸にならないように見守るだけだ。
「元気で。幸せにな。」
そう呟いてハジメはまた決済の書類と向き合った。
epilogue………
そのままユキは小樽でシンと暮らし始めた。
ユキはカフェでアルバイトを始めた。
もちろん働かなくてもハジメからの慰謝料で充分に暮らして行けるのだが、
ユキはシンの言う普通の暮らしがしてみたかった。
立ち仕事などしたこともないユキだったが
シンの会社の近くで時々シンが寄ってくれるし、帰りはいつもシンが迎えに来て一緒に帰った。
「ユキちゃんて彼氏と本当に仲良いね。
てか、彼氏若くてカッコいいよねぇ。
羨ましい〜!」
ユキはカフェの仲間がとても気に入ってる。
主婦のカナさんはいつも楽しそうで、
強くて優しくて正直でつまらない見栄なんか張ったりもせず
多少生活が苦しかろうと常に前を向いて活き活きとしていた。
マスターの高橋さんは落ち着いていて、無口で余計なことは言わないけど、優しくて気遣いのできる人だった。
大学生アルバイトのショウくんは
おしゃれでシンと話が合ってユキによく恋愛相談をしてくる。
小さなカフェだったがユキはそこに自分の居場所を見つけた。
「ユキさん、今日も楽しかった?」
「うん。働くってすごく大変だけどなんか色々あって色んな人と知り合えて楽しいね。
今日なんかね、観光客のカップルが店で大ゲンカしちゃってね…」
ユキの第二の人生はまだ走り出したばかり。
シンとはこの先どうなるかはわからないけれど
とりあえず、今はとても幸せだ。
〜The holiday romance〜
fin
その間に2人で行った場所を何度も訪れ
近くの店も色々回ってみたが
どこにもシンの姿は無かった。
1人で入る客室露天風呂は物足りなく感じたし
シンと過ごした濃密な時間を思い出すと余計に寂しくなった。
ユキは夜の小樽の街に散歩に出かけた。
考えたら夜はホテルで食事を取るので外に出てなかった。
夜の小樽の街は冬になるとイルミネーションで青く染まっていた。
「綺麗。」
昼とは全く違った景色でユキは塞いでた気持ちが少し明るくなった。
その時だった。
「え?ユキ…さん?」
後ろから聞き覚えのある声がして振り向くとそこにシンが立っていた。
「嘘!?やっぱりユキさんだよね?」
あの頃から少し髪が伸びて雰囲気は変わっていたが
相変わらずのスタイルの良さと綺麗な顔立ちは間違いなくシンだった。
「え?…シンくん?」
「どうして?」
「どうしてって私が聞きたいわよ。」
シンは思わずユキを抱きしめた。
「ユキさんが忘れられなくてここで待ってました。
いつかまたここで逢えるって思ってた。」
ユキの瞳から大きな涙の粒がこぼれ落ちて
シンはユキにキスをした。
「奇跡みたいだ。
逢いたくて…ずっと…逢いたくてたまらなかった。
ユキさんのことあれから片時も忘れられなくて…ずっと…逢いたいって…」
ユキはその言葉をこれ以上聞いてられなくなって思わず自分からキスをした。
奇跡だと信じてるシンに元夫からシンの居場所を聞いたことは今は言わないでおこうと思った。
「シンくん、私も逢いたかった。
そうずーっと思ってた。」
ユキはシンをあの日みたいに旅館に連れ帰った。
シンは部屋に着くなり、ユキに言った。
「もう絶対離さないけど…いい?」
ユキは頷いてシンのキスを受け入れた。
「え?雪降ってきた!
じゃあ雪の降ってるうちにあの露天風呂にまた一緒に入ろう!」
シンはそう言ってユキの服を脱がしていく。
ユキはシンの髪にキスをして言った。
「シンくん…たくさん愛してね。」
シンが笑顔で頷いてユキに長いキスをした。
ユキはその夜、シンに離婚したことを告げた。
「もしかして俺を助けてくれたのってユキさん?
オレの辞めた会社ね、それと今勤めてる会社もユキさんの元旦那さんの会社の系列だった。」
「え?」
ユキはそれを聞いてハジメの顔が浮かんだ。
助けてくれたのはきっとハジメに違いなかった。
ハジメはシンのことを調べてるうちにシンが前に勤めていた会社が五明グループの傘下で情報を売ったことがバレて追い出されたという話しを耳に入れた。
しかし詳しく調べてもらうとそれはシンの仕業ではなくその部の部長が犯人だと分かった。
ハジメは真相を伝えて
その部長を懲戒解雇にして、小樽に居るシンには人を使って前より良い待遇で別の会社を紹介した。
そして部長の命令でシンを陥れた前の会社の上司は降格になり、シンに謝罪に行くように命じた。
「俺ね、あの時の濡れ衣晴れたんです。
誰かが上の人に話してくれたみたいで
それで親会社の弁護士さんみたいな人がもっと良い条件で就職を世話してくれて…
前の部長はクビになって元上司はわざわざここまで謝罪しに来てしてくれたんです。
助けてくれたのは大元の会社の偉い人だって聞いて調べてみたら、その大会社の社長の息子さんの結婚式の写真にユキさんが写ってて…
あんなすごい人がユキさんの旦那さんだったんですね。」
ユキはハジメがしてくれた事に感謝したが
あえてそれをシンには伝えなかった。
「私はシンくんと恋をしてこの半年、あの人と別れるために費やしたの。
離婚するのにそんな事、私からは頼めないわ。
やっぱり、ちゃんとシンくんを見てくれてる人が居たんだと思う。」
「そっか。
別れる人が協力してくれる訳ないね。
それにしても誰が助けてくれたんだろう?」
「シンくんは間違ってないんだからそんな事気にしないで堂々と新しいところで頑張って働けばいいのよ。
私もね、1人になったからこれからは好きなことして自由に生きるの。」
「うん。そうだね。
でも…1人じゃなくてオレがいるでしょ!」
そして2人は笑顔になってお互いの手を繋いで歩き始める。
その頃、ハジメは秘書から報告を受けていた。
「お二人は無事に逢えたようです。」
「そうか。ありがとう。下がっていいよ。」
秘書が出て行った後、ハジメは大きな溜息をついた。
自分の手を離れ、若い男と恋をしている元妻が心配でもあるし、もちろん失った淋しさもある。
自分の行いを何度悔いてももうユキは戻らない。
せめて見えない場所からユキに償い、不幸にならないように見守るだけだ。
「元気で。幸せにな。」
そう呟いてハジメはまた決済の書類と向き合った。
epilogue………
そのままユキは小樽でシンと暮らし始めた。
ユキはカフェでアルバイトを始めた。
もちろん働かなくてもハジメからの慰謝料で充分に暮らして行けるのだが、
ユキはシンの言う普通の暮らしがしてみたかった。
立ち仕事などしたこともないユキだったが
シンの会社の近くで時々シンが寄ってくれるし、帰りはいつもシンが迎えに来て一緒に帰った。
「ユキちゃんて彼氏と本当に仲良いね。
てか、彼氏若くてカッコいいよねぇ。
羨ましい〜!」
ユキはカフェの仲間がとても気に入ってる。
主婦のカナさんはいつも楽しそうで、
強くて優しくて正直でつまらない見栄なんか張ったりもせず
多少生活が苦しかろうと常に前を向いて活き活きとしていた。
マスターの高橋さんは落ち着いていて、無口で余計なことは言わないけど、優しくて気遣いのできる人だった。
大学生アルバイトのショウくんは
おしゃれでシンと話が合ってユキによく恋愛相談をしてくる。
小さなカフェだったがユキはそこに自分の居場所を見つけた。
「ユキさん、今日も楽しかった?」
「うん。働くってすごく大変だけどなんか色々あって色んな人と知り合えて楽しいね。
今日なんかね、観光客のカップルが店で大ゲンカしちゃってね…」
ユキの第二の人生はまだ走り出したばかり。
シンとはこの先どうなるかはわからないけれど
とりあえず、今はとても幸せだ。
〜The holiday romance〜
fin