君が望むなら…
自分の想いを彼女に少しでも教えたい…
君は操り人形なんかではないと伝えたい…

衝動とその一心だった初めての口付けは、やはり彼女の望まぬものだった。

彼女は当然、驚きのあまり人形のように動かなくなった。
僕の腕の中で、目に涙を溜めたまま震えて…

僕は自分のしたことをすぐに後悔した。
言葉はあれ以上出てはこなかった。

僕のしたことは、彼女に対しての大変な『罪』だった。
結婚をしたはずの僕達の距離は、結婚当初から縮まってはいないのだから…


ある日から彼女が毎夜屋敷を抜け出していたことを、僕は知っていた。

きっと彼女が彼女でいられる、大切な時間だったのだ。

ともに空を眺めることもしたことがない僕達。
僕はせめて、彼女と同じ夜空の下で星を眺めたかった。

あの日は、いつも以上に冷めきった彼女の顔を自室で見たあとだったため、すぐに君を追うことが出来なかった。

僕が笑って欲しいとどんなに願っても、彼女は笑ってはくれない。
彼女は『僕』という人間といること自体が辛いのだ。

こんなに彼女を愛しているのに。
この身が引き裂かれてしまいそうだった。

僕がそんなことを考えていたせいで……
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