君が望むなら…

やっと見つけた彼女は、引き裂かれた服をまとい、呆然と地面に横たわっていた。

僕は彼女を抱きしめたまま、謝ることしか出来ない。
抜け出した彼女に気付いていたのに、自分の不注意で彼女を辛い目に…

しかし僕は彼女の発した言葉に耳を疑った。

『…良かったですわね、貴方。これでもう、私が貴方のもとにいる理由は無くなりました……』

…彼女の、僕のもとにいる理由が…？

『他の男といて傷物になった妻など、貴族である貴方のそばには相応しくありませんものね。』

そんなことは、断じて無い。
僕のこの大切な出会いに、彼女との結婚に、相応しくないことなんてない。

それに彼女は突然巻き込まれ、そして無理やりその身を散らされただけなのだから…

僕は、全てを諦めきった彼女のその表情に、そう言ってやることが出来なかった。

彼女の良さは、そんなもので消えはしない…
結婚当初から懸命に前を向き、なんとか自分の運命を受け入れようとしていた彼女のなんといじらしいことか。

操られた人形のようなその言葉も、彼女の本心ではないように僕には聞こえた。

それでも彼女が僕をずっと信じられなかったのは事実だった。

僕が彼女に嫌われるのを避けたばかりに…
僕が想いを告げなかったばかりに…

僕の、妻になってくれた君に…