白蛇と猟師
そんなこんなでしばらく経ったある日の夕暮れ、待てども待てども猟師が小屋に帰ってこなかった。

蛇はすぐに何かあったのだと思い、すでに暗闇に染まりかけた森へ、体を精一杯伸ばしながら急いで向かった。

『猟師さま、猟師さま…』


蛇は必死に呼び掛けながら暗い森をしばらく彷徨い、やっと猟師の姿を見つけた。

猟師はグッタリと地面に体を横たえている。

『猟師さま!』

蛇は急ぎ彼のもとに滑り寄ると、その足元を伝い彼の肩口へ向かう。

息はある。
しかし酷い怪我をしているらしく、足元には血が滲んでいた。

その時、猟師が気付き蛇に力無く言う。

「…来てくれたのか、蛇…。だが俺はぬかるみに足を滑らせてな、起き上がることが出来ない…。お前では、その……」

猟師の言いたいことは分かっている。

この小さな白蛇では助け起こすことも、誰かを呼びに行き助けてもらうことも出来ないであろうことを。

『猟師さま…それでも私は、あなたを必ず助けたいのです。もう少しだけ、待っていて下さい……』
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