裏切りの果てに~ただあなたと胸を焦がすような恋がしたかった~
『誰?あなた何を知ってるの!?』


『既婚者なのに不倫なんて、旦那様が可哀想。ひどくないですか?旦那様に話しましょうか?』


『や、やめて!あなた本当に誰?ビラもあなた?』


もう、すごく怖くて手が震えた。


『不倫で他の男とみだらな行為をして恥ずかしくないんですか?』


『どうして欲しいの?お金?』


『…』


『お金なんてない。私…どうしたら…』


もう、頭が回らない。


『自分で考えれば?不倫を続けたいなら続ければいい。でも、可哀想なのは旦那様』


『お願い、あなたが誰なのか教えて』


『…私、ずっとあなたを見てるわ』


背筋が凍る。


私はたまらず電話を切った。


床に座り込み、震えた手で顔を覆って泣く。


『…誰なのよ…』


変声機を使ったような声、男女の判別も出来なかった。


私、これからずっと怯えなきゃいけないの?


寛也さんとの幸せは?


もう会えないの?


そんなの嫌だよ…


私はひとしきり泣いて、そして、床に寝そべったまま動けなかった。


数時間…闇の中で1人ぼっちで過ごした。
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