三羽雀
「そちらも態と当たったのではなくて?前を見て歩いていれば向こう側から人が来ていることくらい気づくでしょう」
「しかし君が前を見ていなかったからこうなったのだろう」
二人の口論は収まるどころか激化している。
「もしもし、そこのお二方」
ある一人の若い男性の声で、少女と巨漢はそれまでの言い争いが嘘であったかのように静かになった。
「おい、何だね君は」
横に大きい中年男性はその声の主を見上げた。目線の先には学生が立っている。
「先程から少し見ていましたが、言い争いは良くないですよ」
春子も男性も、ムスッとしてお互いに軽蔑の目を向けている。
「そもそもこの小娘が俺の方にぶつかってきたんだ、前を見て歩かんからだよ。女学生のくせにつけ上がって」
学生は、少女に向かって身を乗り出した男性を制した。
「女学生のくせに、というのは聞き捨てなりませんね。女性であれ、学生であれ、それは言い訳として通用しないでしょう」
「なっ……!君もこの女学生の味方をするつもりか」
「まだ彼女の言い分を聞いていませんからね、何とも言えませんが。ただし、少なくとも僕は女性や若者であることが批判の理由になるとは思わないし、容認できかねます」
学生は呆れた顔をしている。
「それで、君は。そもそも何故口論になったんだい」
「私が歩いていたら、この人がぶつかってきたんですよ。もしかしたら私が前を向いて歩かなかったからこうなったのかもしれないけれど、この人だって、私が歩いてきているのが分かっていたら避けられたはずなんです」
「しかし君が前を見ていなかったからこうなったのだろう」
二人の口論は収まるどころか激化している。
「もしもし、そこのお二方」
ある一人の若い男性の声で、少女と巨漢はそれまでの言い争いが嘘であったかのように静かになった。
「おい、何だね君は」
横に大きい中年男性はその声の主を見上げた。目線の先には学生が立っている。
「先程から少し見ていましたが、言い争いは良くないですよ」
春子も男性も、ムスッとしてお互いに軽蔑の目を向けている。
「そもそもこの小娘が俺の方にぶつかってきたんだ、前を見て歩かんからだよ。女学生のくせにつけ上がって」
学生は、少女に向かって身を乗り出した男性を制した。
「女学生のくせに、というのは聞き捨てなりませんね。女性であれ、学生であれ、それは言い訳として通用しないでしょう」
「なっ……!君もこの女学生の味方をするつもりか」
「まだ彼女の言い分を聞いていませんからね、何とも言えませんが。ただし、少なくとも僕は女性や若者であることが批判の理由になるとは思わないし、容認できかねます」
学生は呆れた顔をしている。
「それで、君は。そもそも何故口論になったんだい」
「私が歩いていたら、この人がぶつかってきたんですよ。もしかしたら私が前を向いて歩かなかったからこうなったのかもしれないけれど、この人だって、私が歩いてきているのが分かっていたら避けられたはずなんです」