三羽雀
「春子さん、僕はただ、戦地に赴く前に好きな人と結婚したいと思っているのです。こんな話をするのもなんですが、僕も僕で世間の目というか……とにかく入隊します。そうすれば少なくとも徴兵を拒否したとは思われない筈です。大学の伝手で軍楽隊には入れてもらえると思うのですが、やはり戦地に行くことに変わりはないと思うので」
恥ずかしさのあまり、春子は勝俊から視線を逸らしている。
「一生のお願いといったところですかね」
勝俊は少し照れくさそうに笑っていたが、きっぱりとした表情で春子に向き直った。
「戦争が終わったら、僕は必ず春子さんを迎えに行きます。寂しい思いはさせてしまうかもしれませんが、決して悲しい思いはさせません」
「……神藤さん、そこまで言ってくださるのは嬉しいですが……」
実直な勝俊を前にして、春子は意中の人が他にいると伝えることができなかった。
「直ぐに返答を求めるわけではありません。イエスでもノーでも、どちらでも良いです」
春子の口元はキュッと結ばれている。
勝俊は、持ち直したように話し始めた。
「それから、僕は春子さんのご家庭のことはまだ詳しく知りませんし、春子さんを僕の人生に利用しようという気などは少しもありません。それだけは分かっておいていただきたい。これは純粋な僕の気持ちのみの話です。まだ両親にも打ち明けていない。だから、春子さんもここだけの話にしておいてください」
恥ずかしさのあまり、春子は勝俊から視線を逸らしている。
「一生のお願いといったところですかね」
勝俊は少し照れくさそうに笑っていたが、きっぱりとした表情で春子に向き直った。
「戦争が終わったら、僕は必ず春子さんを迎えに行きます。寂しい思いはさせてしまうかもしれませんが、決して悲しい思いはさせません」
「……神藤さん、そこまで言ってくださるのは嬉しいですが……」
実直な勝俊を前にして、春子は意中の人が他にいると伝えることができなかった。
「直ぐに返答を求めるわけではありません。イエスでもノーでも、どちらでも良いです」
春子の口元はキュッと結ばれている。
勝俊は、持ち直したように話し始めた。
「それから、僕は春子さんのご家庭のことはまだ詳しく知りませんし、春子さんを僕の人生に利用しようという気などは少しもありません。それだけは分かっておいていただきたい。これは純粋な僕の気持ちのみの話です。まだ両親にも打ち明けていない。だから、春子さんもここだけの話にしておいてください」