三羽雀
幸枝は頬杖をついた人差し指の先を春子に向ける。
「もう時間がないわよ。春子ちゃんがあなたの好きな人に告白したとして、相手の方も応えてくれればそれは良いことだし、もし上手くいかなかったらそれまでよ。春子ちゃんなら分かるわね。あなたにお付き合いを申し込んだ方にも、あなたの好きな人にも、残された時間は同じよ」
「うん……」
その日の帰り、春子は悶々としていた。
(思い悩む私を見ていられない?幸枝さんが?)
(神藤さんにも清士兄さんにも残された時間は同じ……幸枝さんったら、何を言っているのか全く分からないわ)
春子の頭の中に幸枝の言葉が巡り続ける。
部屋の中で長い間考えていたが、いつしか家の外は暗くなり階下から賑やかな声が聞こえた。
(珍しいわね、お客さんでも来たのかしら)
「あら、お嬢様。成田様がおいでですけれども、一度居間の方へお顔を出しにいらっしゃってはいかがですか」
階段を降りたところでゆきに声をかけられた春子は、その名前を聞いて嬉々としている。
「ええ、直ぐに行くわ」
今の前に座り、両手で丁寧に襖を開けて膝の前に柔らかく手をつく。
「こんばんは、春子でございます」
亭主と客人は既に酒が回っているようで、上機嫌に春子を手招きする。
「春子ちゃん、酌をしてくれ!」
「はい」
「もう時間がないわよ。春子ちゃんがあなたの好きな人に告白したとして、相手の方も応えてくれればそれは良いことだし、もし上手くいかなかったらそれまでよ。春子ちゃんなら分かるわね。あなたにお付き合いを申し込んだ方にも、あなたの好きな人にも、残された時間は同じよ」
「うん……」
その日の帰り、春子は悶々としていた。
(思い悩む私を見ていられない?幸枝さんが?)
(神藤さんにも清士兄さんにも残された時間は同じ……幸枝さんったら、何を言っているのか全く分からないわ)
春子の頭の中に幸枝の言葉が巡り続ける。
部屋の中で長い間考えていたが、いつしか家の外は暗くなり階下から賑やかな声が聞こえた。
(珍しいわね、お客さんでも来たのかしら)
「あら、お嬢様。成田様がおいでですけれども、一度居間の方へお顔を出しにいらっしゃってはいかがですか」
階段を降りたところでゆきに声をかけられた春子は、その名前を聞いて嬉々としている。
「ええ、直ぐに行くわ」
今の前に座り、両手で丁寧に襖を開けて膝の前に柔らかく手をつく。
「こんばんは、春子でございます」
亭主と客人は既に酒が回っているようで、上機嫌に春子を手招きする。
「春子ちゃん、酌をしてくれ!」
「はい」