三羽雀
「要は、その方は戦争に行くことをまだ受け入れられていないのよ。戸惑っていると言ってもいいわね……本人にとっては生きるか死ぬか分からない状況に立たされようとしているのに、結婚となれば重荷になってしまったのかも……私はそう思うわ」
春子はもう何も言うことがなかった。
頭が真っ白になって、自分が何をしているのかが分からなくなってしまったのであった。
「私……もう帰るわ。少しだけでも話を聞いてくれてありがとう」
春子はまた屋敷を飛び出て帰宅した。
それから三日ほどずっと自分の起こした行動について考え続けていたが、春子の運命を変える出来事が起きた。
それは突如としたことであった。
「お嬢様、旦那様と奥様がお呼びです」
夕食を食べ終わって自室で過ごしていた夜のことである。ゆきに呼ばれた春子は部屋を出て階下に降りた。
「おお春子、入りなさい」
階段を降りてすぐの居間には父と母がいた。
「ほら、ここにお座んなさい」
母がぽんぽんと手を当てた座布団の上に座る。
「お父様もお母様も二人してどうしたの」
父が咳払いをした。
「その……神藤製糸所のところの御子息の話なんだが」
「それって……」
春子は黙ってはいられなかった。
「縁談があるんだよ。分かるね」
「勝俊くんとは仲が良いと聞いているわよ、私も賛成だわ」
念を押すように話す母を見て、春子は唇を噛んだ。
「もし他に気になっている人が居るのであれば、この際言ってくれてもいいんだぞ」
下を向いてばかりの娘が心配になった父は、そう語りかける。
春子はもう何も言うことがなかった。
頭が真っ白になって、自分が何をしているのかが分からなくなってしまったのであった。
「私……もう帰るわ。少しだけでも話を聞いてくれてありがとう」
春子はまた屋敷を飛び出て帰宅した。
それから三日ほどずっと自分の起こした行動について考え続けていたが、春子の運命を変える出来事が起きた。
それは突如としたことであった。
「お嬢様、旦那様と奥様がお呼びです」
夕食を食べ終わって自室で過ごしていた夜のことである。ゆきに呼ばれた春子は部屋を出て階下に降りた。
「おお春子、入りなさい」
階段を降りてすぐの居間には父と母がいた。
「ほら、ここにお座んなさい」
母がぽんぽんと手を当てた座布団の上に座る。
「お父様もお母様も二人してどうしたの」
父が咳払いをした。
「その……神藤製糸所のところの御子息の話なんだが」
「それって……」
春子は黙ってはいられなかった。
「縁談があるんだよ。分かるね」
「勝俊くんとは仲が良いと聞いているわよ、私も賛成だわ」
念を押すように話す母を見て、春子は唇を噛んだ。
「もし他に気になっている人が居るのであれば、この際言ってくれてもいいんだぞ」
下を向いてばかりの娘が心配になった父は、そう語りかける。