三羽雀
「はあ」
清士は幸枝が何を言っているのか分からなかった。
「決して驕っているわけではないわ……貴方も同じでしょう?」
何も言わず動揺した様子を見せる清士を前に、幸枝も徐々に混乱を覚えた。
ナンバースクール──それも一番目──の制服を着た成田という人物。
これは成田実業の人間で間違いないと確信していたのだ。
自ら家族の経営する企業に出入りし業界の情報を蒐集しているからこそ、相手も当然そうして自身の身の上を知っていると思い込んでいたが、実際はそうではないらしい。
「……貴方ほどの方が私のことをご存知無いだなんて、心外ね」
「何を仰っているのかさっぱり」
「やはり貴方は真面目なかたね」
種類の違う困惑を覚えた二人の間にはコーヒーの香りだけが漂っている。
幸枝は辺りを見回すと、突如として身を乗り出して清士に顔を近づけた。
「……貴方、成田実業の御令息でしょう」
清士は突然投げかけられた核心を突く発言に目が醒めた。いや、突然近づいた少女の姿を見て緊張したというべきだろうか。
「そうか、それで貴女は僕と『同じ』だと?」
席に座り直した幸枝はそっけない表情で、
「見れば分かるわよ。歩き方から話し方、手先の所作まで……同類だから分かるのかしらね」
と言って目前の体を端から端まで見つめる。
「成田さんは、私のことをご存知でなくて?」
「いや、その……」
実際、清士は幸枝のことは一切知らなかった。
勉学に集中するためと言って、これまで父の経営する会社については全く触れてこなかった。
敢えて同世代の人間の紹介や縁談話も忌避している。
清士は幸枝が何を言っているのか分からなかった。
「決して驕っているわけではないわ……貴方も同じでしょう?」
何も言わず動揺した様子を見せる清士を前に、幸枝も徐々に混乱を覚えた。
ナンバースクール──それも一番目──の制服を着た成田という人物。
これは成田実業の人間で間違いないと確信していたのだ。
自ら家族の経営する企業に出入りし業界の情報を蒐集しているからこそ、相手も当然そうして自身の身の上を知っていると思い込んでいたが、実際はそうではないらしい。
「……貴方ほどの方が私のことをご存知無いだなんて、心外ね」
「何を仰っているのかさっぱり」
「やはり貴方は真面目なかたね」
種類の違う困惑を覚えた二人の間にはコーヒーの香りだけが漂っている。
幸枝は辺りを見回すと、突如として身を乗り出して清士に顔を近づけた。
「……貴方、成田実業の御令息でしょう」
清士は突然投げかけられた核心を突く発言に目が醒めた。いや、突然近づいた少女の姿を見て緊張したというべきだろうか。
「そうか、それで貴女は僕と『同じ』だと?」
席に座り直した幸枝はそっけない表情で、
「見れば分かるわよ。歩き方から話し方、手先の所作まで……同類だから分かるのかしらね」
と言って目前の体を端から端まで見つめる。
「成田さんは、私のことをご存知でなくて?」
「いや、その……」
実際、清士は幸枝のことは一切知らなかった。
勉学に集中するためと言って、これまで父の経営する会社については全く触れてこなかった。
敢えて同世代の人間の紹介や縁談話も忌避している。