涙色の死神と巫女と妖怪と
「……何だ?何かに弾かれた……」

嵐猫は、そう呟いてから辺りを見渡した。

「……これ、結界か?」

葉月はそっと透明な壁に触れ、ゆらゆらと揺れる景色を眺めた。

「……そういや、この間母さんが……結界破りの御札をくれたな」

カバンの中を漁り、瑠依は「あったあった」と御札を取り出す。

「確か、結界に札を貼るだけでいいって言ってたな。試してみるか」

瑠依は結界に近づくと、瑠依は札を結界に貼り付けた。しかし結界は破れる気配はなく、瑠依は頭にクエスチョンマークを浮かべる。

「ん?これ、前に父さんが作ってた試作品じゃん……もしかして、試作品の方を瑠依のお母さんに渡した感じかな?」

瑠依が貼った御札を見つめながら、菫はそう言う。菫の父親は、普通の会社員として働きながら陰陽師や死神の仕事を助ける道具を作っているのだ。

「……でも、改良されたやつだから霊力込めたら発動すると思うよ」

菫の言葉を聞きながら、御札に手を当てた葉月が霊力を御札に込めると、バシン、と音を立てて結界が破れ、御札は塵となって消えていった。

「……ボク、帰ったら父さんに完成品と試作品を間違えて渡さないように言っておくね」
< 12 / 20 >

この作品をシェア

pagetop